自分のルーツ 〜PhotoWord〜

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若い頃は、

自分の住む町が

あまり好きではありませんでした。

お店もない、おしゃれなものもない、

家には、花柄のポットや炊飯器、

レースの柄のビニールのテーブルクロス。

街に出るには、バスや電車に乗らないといけない。

母のセンスも、全然好きじゃなかったり、

毎日仕事で、休みの日は、

テレビの前で野球とゴルフばっかり観ている父。

普通とか

常識とか

同じとか

ちっとも面白くない毎日。

「あーいやだ、いやだ」

日曜日の昼下がりは、

あまりの退屈さにうんざりしたものでした。

早くこんなところから

飛び出してしまいたい!

やがて学校や職場へ行くようになると

街で過ごす時間が多くなりました。

刺激がいっぱいの街を楽しみました。

数年が経ち、今度は、

世界を見に行ってみたい!と思いました。

海外で暮らしてみると、

根こそぎ文化の違う国や人に出会って

日本のふつうとか、常識とは、

別世界に身を置くことになり、

それはそれは新鮮で、刺激的でした。

そんなふうにしていると

かえって、日本のことを考えることが

多くなりました。

「君はどこから来たの?」

日本にいる家族のことや、

住んでいた町のことを話すうちに、

あんなにうんざりしていたものが

まったく違う色になっているようでした。

ふつうだけど、良いところ

退屈だけど、のどかなところ

いつも同じだけど、やさしいところ

日本のことが素晴らしいと思ったり、

田舎の町のことを愛おしく思ったりしました。

ルーツ

私を作った場所

根源を好きになることは

自分を好きになること。

私のルーツである町を好きでなかった私は、

自分のことも好きじゃなかったようでした。

地元のスポーツチームを応援したり

オリンピックや世界大会で

日本を応援する時、

応援するもの同士、

一体感を感じられたり、

なによりとても気分がいいのは、

自分を自然に承認することができるせいかもしれません。

この町まるごと

日本全国まるごと

自分とつながっている感覚。

少し離れてみることで

かえってちゃんと見ることができる

ルーツとはそういうものかもしれませんね。

池尾千里

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